思わず、ため息が漏れるほどの美しさに出会うことが、しばしばある。
が、それらは、ほとんどと言っていいほど、コンクリート街の中にはない。
さらに言えば、手付かずの自然の中にもあまり見られない。
その場合は、圧倒的という言葉がよく似合うと私は思う。
山々の稜線や、大滝などがそうである。

手付かずの自然には、どちらかといえば恐怖を感じることが多い。
アマゾンの大自然といえば、足を踏み入れれば最後。
ガイドなしでは再び帰ってこれる気がしない。
そういった恐怖が手付かずの大自然にはあり、
それに比べて、日々、美しさを感じる風景には、必ずと言っていいほど、
人の手がくわえられている。
橋の下を流れる川や、土手や棚田などがそうで、海辺にサバニが転がっていてもいい。
絵心と筆があれば、ついついその場で描きたくなるような風景である。

そのような風景には、自然の織りなす表情と、人々が丹精を込めて造ったものの間。
その中で一瞬のうちに輝き、そしてまた日常に戻っていく。

その美しさを感じる心は、人々が何千年もの時を自然と共にしてきた証であり、
自然と共に生きていく知恵なのではと考えるのである。

そして今日も、その美しさに出会った。
い草の田んぼにかかる朝霧が何とも言えず美しく。
音もなく静かに佇むその風景は、たとえそこに編笠を被り、
蓑を纏って田の手入れをする、かつてのお百姓さんがいたとしても、
私は信じたであろう。

私は歌など作れないが、正岡子規や、高浜虚子など明治の俳人なら、
どう詠むのだろうと思いをはせた。



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